リサーチ・マニア

日本人は世界一の心配性

二つの調査で分かること

JWTの”Anxiety Index”から

一年間も失業していたノンキ人間が言っても説得力がありませんけど、日本人は色んなことに心配し過ぎではないでしょうか。

昨年アメリカの広告代理店J・ウォルター・トンプソン(JWT)が調査・発表したレポートでは、世界11カ国の「心配性」の具合が比較されています。
題して"Anxiety Index"で、リンクは http://anxietyindex.com/ です。

消費者の購買意識を刺激するには、不安要素を取り除かなければならない。そのために、ブランディングなどのマーケティング活動はどこに力点を入れるべきか。こうしてこの調査の目的は広告代理店の業務とつながるわけです。

「何か心配事がありますか?」に「はい」と答えた人の割合を国別に集計したのが以下の表です。

心配事のある人 %
1 日本 90
2 ロシア 84
3 インド 74
4 アメリカ 72
5 スペイン 70
6 ブラジル 66
7 イギリス 65
8 オーストラリア 59
9 カナダ 55
10 フランス 42
11 中国 35

一位は日本。9割の人が心配事があると回答しています。
二位はロシア、3位がインド。そしてポジティブ・シンキングの国=アメリカ合衆国が4位に入っている。一番楽観的なのが中国。都市部 の経済発展だけ見れば、「そうかもね」ですが、これには国民性も表れていると思います(根拠は後述)。

JWTの調査は更に「どんなことが心配ですか?」と心配のタネを尋ねています。列挙されているのは、身近なものから国際情勢まで。

犯罪
雇用の安定
生活コスト(物価など)
健康コスト(健康保険や医療費)
経済情勢
政治家のリーダーシップ
テロリズムの脅威
目前の軍事的脅威(すぐにでも戦争が始まるかも知れない)
潜在的軍事的脅威

これらの9項目について「心配している人」が「していない人」の何倍いるかという比率が国別に算出され、比較しやすいように調査11 カ国の平均も掲出されてます。11カ国平均と比べて、日本が突出しているのは、政治家のリーダーシップへの不安(11カ国平均の5倍)、経済状況への不安、健康コストへの不安、犯罪への不安(ともに同平均の倍)です。一方、11カ国平均とほぼ変わらないのが、雇用の安定への不安とテロリズムの脅威に対する不安でした。

これは、「そうかなあ」というのが実感ではないでしょうか?
他の国と比べて、犯罪や健康コストへの不安が高いのは意外です。今の日本に問題がないとはサラサラ思いませんが、もっと深刻に心配し たほうがいい国が楽天的に構えています。

もう一つの調査から

ひょっとして、これは目下の状況への評価というより、国民性の表れかも・・・。
と思い、別の調査を紐解いてみました。

こちらはIBMの研究者のG.ホフステードという人が書いた本。
"Culture's Consequences" (Geert Hofstede, Sage Publications, 2001)。
副題に"Comparing Values, Behaviours, Institutions, and Organizations Across Nations"とあります。50カ国以上のIBMの社員を 対象に調査を行い、五項目のユニークな尺度で各国民の価値観を調べています。

Power Disctance (支配者への心理的距離感)
Uncertainty Avoidance (不確実性を回避する傾向)
Individualism and Collectivism (個人主義か集団主義か)
Masculinity and Feminity (男性原理か女性原理か)
Long- Versus Short-term Orientation (長期志向か短期志向か)

注目したのは「不確実性回避傾向」です。
下の表にまとめました。
心配インデックス 不確実性回避インデックス
1 日本 日本
2 ロシア スペイン
3 インド フランス
4 アメリカ ブラジル
5 スペイン オーストラリア
6 ブラジル カナダ
7 イギリス アメリカ
8 オーストラリア インド
9 カナダ イギリス
10 フランス 香港(*)
11 中国

左の欄はJWTの調査の順位(心配インデックス)、右にホフステード氏の調査の順位(不確実性回避インデックス)に基づいて11カ国 を並べてみました。
ただ、中国とロシアはホフステード氏の調査対象になっていません。中国の代わりに香港を入れておきました。
インド、アメリカ、ブラジル、フランスを除くと、だいたい相関してますね。
どっちでも日本人が心配性だし、不確実なことは避けたがる傾向がある、と示しています。

紛争の絶えない国際情勢や経済の不調を見れば、日本人くらい心配して当たり前なのでしょうが、ちょっとリラックスしたほうが長生きで きるかも知れません。
あれ、でも日本は長寿国だったよな・・・。

(本稿終わり)
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