週刊外資系新聞

営業マネージャーのための予算必達術

メルマガ 2010年8月1日号

第3章 外資系企業で求められる語学力

第1節 生き残るための英語力

楽天やユニクロが社内の公用語を英語にすると報じられています。
上級の管理職ではTOEIC700点、中間管理職で650点。
これが求められる英語力の目安だそうです。
日本の会社が英語を社内公用語にすることの是非はともかく、これはいいトコロをついた数字だなあと思っています。
メール・マガジン第三章は語学力がテーマです。

私は今まで、フランス系、イタリア系、スイス系の会社で働いてきました。
どの会社も、社内の公用語は英語でした。
しかし、フランス人社員たちが、四六時ちゅう英語を話していたかというと、そんなことはありません。
フランス語を話せない人が入る会議は英語でしましょう。
その際に使う書類も英語で作りましょう。といったものでした。
フランス人社員同士の打ち合わせは、当然フランス語でしたし、イギリス人のCEOも、フランス語を話していました。
社内の公用語が英語になるというと、日本人同士が英語で話している場面を想像しますが、楽天やユニクロでも、日本人だけの会議は日本語で行われるでしょう。
そうでなければ、大笑いです。

外資系企業ではどの程度の英語力が必要か?
三つのレベルに分けて考えてみましょう。

最初は本当のネイティブのレベル。
幼いときから英語圏で教育を受けた日本人の英語です。
知識として学んだ英語でなく、身についた状態の英語です。

話が少し横道にそれますが、ネイティブの英語が、勉強して身に付けた日本人の英語と一番違うのは、冠詞の使い方です。
aなのか、theなのか、はたまた冠詞はいらないのか?
TOEIC900点以上の人でも、こと冠詞については必ずネイティブ・スピーカーに手直しされます。

英語が母語のネイティブ・スピーカーなら、外資系企業では、さぞ出世も早かろうと思いきや、そうでもないのです。
英語よりもはるかに難しい、日本語の壁があるからです。

日本語は難しいなどと言う気はありません。
日常会話程度なら、日本語は優しい言葉の部類に入ると思います。

ところが、いったん「ていねい日本語」のレベルになると、突然日本語は難しくなります。

社内で同僚と話しているうちは、カジュアルな口語体の日本語でいいんです。
ところが、対外的に、例えば取引先の偉い人に会ったり、クレームの電話を受けたり、お礼状や案内状を書いたりと、ていねい言葉を使わなくてはならない状況が出てきます。
こうなると、口語体の日本語しか知らない人はお手上げです。
日本語とはいえ、まったく別の言葉くらい違いますから。

(中には日本人も驚くほど、きちんとした言葉使いができる英語ネイティブ・スピーカーもいますが、こうした人は本当に稀で、大抵は「あのお喋り君」が急に「このダンマリ君」になってしまいます。)

ですから対外的な活動が中心の営業やマーケティング部門では勝手が悪い。
かといって、経理や財務は専門的な勉強をしてなくてはいけませんから、結局のところ活躍できる場は限られてしまいます。

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TOEIC900なら安泰か?
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それでは、日本語が母語で、かつ英語も流暢に話せる、TEOIC900点以上の人はどうでしょうか?
努力して英語を体得した人です。

結論から言うと、出世は早いです。
英語ができるから、ということ以上に、TOEIC900点を取るのには、かなりの努力が必要で、その努力を惜しまず出来る性格が、職場でもその人を引き上げてくれます。英語もできるし、仕事もできる、というタイプです。

また、外国語を学ぶことは、その実、外国語を鏡にして日本語を学び直していることでもあるので、日本語を操る力も磨かれています。

ですが、こうした人は生来の真面目な性格が災いして、失墜しやすい。
ある日突然会社から居なくなります。

なぜか?
英語ができるので、本国や上司と意見が合わないと、反論してしまう。
おまけに、持ち前の熱心さで理路整然とやるのですから、どうしても煙たがられます。

それに、これはどういう訳なのかは分かりませんが、日本語で話す時には、言葉を選んで慎重に話す人が、外国語になると急に雄弁になってしまう。
こうしたことがあります。
欧米語を話す人間という一種のペルソナ(仮面)が貼り付くのか、英語的なというか、直截な論理回路が頭脳を乗っ取ってしまうのか、なぜか攻撃性が前面に出てしまいます。

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ブロークン・レベルが正解
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長い目で見ると、TOEIC650とか700点くらいの英語力の人が外資系では一番長生きできます。

TOEIC650や700では、実務にはまだ不十分です。
書類やメールは読めますが、丁々発止の議論をしたり、入り組んだ内容を説明する文書を書くには、まだ力が足りない。

しかし、このレベルの人は、知恵と度胸で英語力の不足を補ってしまいます。
おまけに、要領をわきまえていて、人間関係にもよく気を使うので、社内でも波風立てずに振舞うことができます。

問題は、上司が英語で言うことは理解できますが、即座に反論するだけの流暢さはないこと。
理不尽なことを言われても、その場はグッとこらえることになります。

これはストレスになります。
が、このタイプの人は、ちゃんとワーク・ライフ・バランスをわきまえていて、週末にサーフィンしたり、釣りをしたりして、ストレスを溜めこみません。

このへんの「大人の」バランス感覚まで含めて、管理職はTOEIC650から700と命じたのならば、楽天・ユニクロ恐るべしです。
(そんなことはないでしょうけど。)

そういえば、私のいたフランスの会社でも、フランス人がプレゼンをする時の開口一番は「英語は下手で御免なさい」でした。
それでいいんです。

今回もお読みいただきありがとうございます。

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