週刊外資系新聞

営業マネージャーのための予算必達術

メルマガ 2010年2月7日号

第1章 上司が欧米人

クイック・ウィン上司を操る

クイック・ウィンの上司は、遅かれ早かれいずれ失脚します。
前回のメルマガ(第5号)で書きました。
(私がそうだったんだから、ホントです。)
せめてその彼・彼女が失脚するまで、機嫌よく働きたいものです。
「こんな上司はダメだ」とあなたが辞めちゃダメですよ。

楽しく働くための3つの作戦をご紹介しましょう。
ポイントさえ押さえれば簡単な方法です。

その一。
顧客に会わせる。

「そんなの自殺行為だ。お客とケンカになる。出入り禁止になる」。
普段クイック・ウィン上司があなたに発している高飛車な要求からすると、
そう思うのも無理はありません。

でも、そんなことはないのです。

クイック・ウィン志向の上司は、たいてい英雄志向の強いD型人間ですから
名俳優に変身するのです。
重要な顧客を前にした時には「特に」です。
だって、手っ取り早い成果が目の前にブラ下がっているんですから。
オマケに、何でも自分で決めたいD型ですから、その場で結論が出るのであれば、
あなたが慌てるほどの譲歩を即座にします。

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却下されがちなプランを通す
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日ごろ日本の取引慣習を「古臭い」「遅い」「保守的」とけなしている
欧米人の若い社長が私の上司でした。
金髪を短く刈り揃え、長身のスポーツマンで、
物腰も堂々としています。

そのジャパン社の取引先は百貨店が多く、商談は私がやってました。
数年前までは百貨店の人はガイジンと会うのを嫌ってましたから。

年に何度かジャパン社の社長を百貨店の偉い人引き合わせることもありますが、
それは本社から(本当の)社長が日本に来て、挨拶に行くとか、
ショップがオープンしてお礼の挨拶をしにいくとか、
まあ、表敬訪問でした。
普段は「話の分かる日本人同士で営業の現場は回しましょう」という感じです。

「ウチの製品の売り場をもっと広くしてくれ」とか、
「掛け率を変えろ」とかの話は、日常的に「挨拶代わりに」交わしますが、
百貨店とギリギリ本格的な交渉をするのは年に1度か2度です。
(掛け率っていうのは、百貨店に卸し売りする際のマージンのことです。)
日常的には丁々発止のやり取りなど、してません。

ふだん営業担当者が百貨店と協議しているのは、
販売促進キャンペーンなど「大売り出しのプラン」についてです。

なかでも頭を悩ませるのが、エクスクルーシブ(限定)商品の企画です。

他の百貨店と差をつけるのに一番いいのは、
「そこでしか売ってない商品」があること。
百貨店はエクスクルーシブ商品には力を入れて宣伝してくれたり、
売り場のいい場所に置いてくれたりするので
ジャパン社にも営業的には有難い話です。

問題は、いかに大きな百貨店チェーンでも販売できる数量は限りがあって、
一社だけのために新しい商品を一から開発するのは、とても難しいのです。
そこで、外資のナントカ・ジャパン社には、
「外国では売っているが、日本未発売という商品はないの?」という話が来ます。
「それをウチが日本で独占販売する」というエクスクルーシブ商品の選定のためです。

でもね、なんで日本で売ってないかっていうと、
日本で売れそうにないからなの。
日本未発売ってことは、日本向きではないってことで、
別に出し惜しみしているわけではないのです。

百貨店のバイヤーに見せて、
「いいじゃん。こんなの見たことないけど、
売れるよ。100個だけ、取り寄せられないかな?」
となれば有難いんですが、それで終わりじゃないんです。

今度は本国の工場に掛け合わなくちゃならない。
ただでさえ、納品までの時間が短く、工場に無理を聞いてもらう必要があります。
工場としては、通常の商品だって生産が遅れぎみなので、
少ない数量の注文は後回しにしたい。

そうなると、本社と交渉してくれと、社長にお願いしに行くわけです。

「え、なんでそんな限定品が必要なの?
ウチの売り場はただでさえ狭くて、定番の商品だって置ききれていないじゃない。
ホカの案をもう一度話し合って来てよ」。
ということで、簡単に却下。

数量も少ないんでしょうがないよな。と、私もあきらめればいいものを、
営業・マーケティング人間の習性で、何とかしたくなってしまいます。
給料のために働いているけど、お客さんが喜んでくれるのが嬉しいんですから。

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準備は念入りに
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そのシーズンの限定品の提案はあきらめて、
次のシーズンのために仕切りなおしをしました。

百貨店のバイヤーに「半年から一年先までの販促の予定を教えてくませんか」と
頼みました。
「そんな先の予定は、他社に知られるとマネされるから駄目だ」と
最初は断られました。
「それくらいの時間がもらえなければ、本国の工場が押さえられない。
外資の特例と考えてください」と頼んで、なんとかゲット。

小売のプロが社内向けに作る資料ですから、緻密にできています。
週ごとに何を仕掛け、何を売るのかが綿密にプランニングされている。
しかし、社内資料なので、何とも見にくい。
それに、当たり前だけど、全部日本語。

この資料をベースに英語でプレゼンテーションの資料を作りました。
それをバイヤーに見せて、
「これを使って、うちの社長にプレゼンしてください。
特に春商戦スタートの時期のエクスクルーシブ商品は
とっておきの商品が欲しいと言ってくれ」と頼みました。

そしてある日、プレゼンテーションを設定したのです。
「アイサツ(Courtesy Visit)だったら、会わないよ。
あれはムダだからね。
ゴルフの話をするだけで、ビジネスの本題に入らないからね」。
「アイサツじゃ、ありません。販売促進プランのプレゼンです。
先方は社長の協力を求めたいプランがあると言ってます」。

百貨店もバイヤーだけでなく、部長も同行してやって来ました。
私はこうした場合は通訳です。
販売促進策の一覧表や、これまでの限定商品の販売実績など
スクリーンに映し出しながらバイヤーが説明をします。
私が通訳します。

黙って聞いていた社長が話し始めます。
私が通訳・・・
「え、うそ・・・、そこまでする? 
アナタ自分で言ってること分かってんの?」
日本語に通訳する前に、耳に入ってきた社長の言葉が信じられませんでした。

それからも、社長は次々と積極策の開陳です。
「こんな商品もあるけど、どうですか?」
「間に会わないことはありません。本社にかけあってみますから。
いつまでに必要ですか?」

作戦成功でした。
しばらく社長は、張り切って本社とのやり取りをしていました。

上手くいったのは、欧米式に要求が具体的ではっきりしていたから。
挨拶の会話のなかで遠まわしに言及するという
ソフィスティケイトされた要求のしかたでなく、
プレゼン形式にして、分かりやすくしたことが良かったんです。

作戦その1。顧客に会わせる。
ただし、挨拶訪問は無意味。要求をはっきりと伝えるプレゼンをしてもらうべし。

忠告。この作戦は副作用もあります。
「こりゃ、話が早いワ!」と、
マネジャーの頭越しに社長が顧客と直接話をするようになってしまう。
「なんだ、関さんなんて要らないじゃない」
となってしまいます。

現場のフォローに力を入れて、問題点を見つけ出して、
「あー、そんなメンド臭いこと、関さんがやっておいて・・・」という
状況をいつも作っておく必要はあるわけです。
営業マネジャーは、ノンビリできません。

今回もお読みいただき、ありがとうございます。
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