週刊外資系新聞

営業マネージャーのための予算必達術

メルマガ 2010年1月31日号

第1章 上司が欧米人

クイック・ウィンの落とし穴

メルマガの感想を多くの方からお寄せいただいています。
ありがとうございます。

「日本の企業で働いているが、ウチの日本人の上司もクイック・ウィンだ」。
というご意見をお寄せいただきました。

おっしゃるとおり。
クイック・ウィンは欧米人に限ったことではありません。
条件が揃えば、誰でもクイック・ウィン志向になります。
一時期の私もそうでした。

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 功をせかす条件
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どんな時にクイック・ウィンに駆り立てられるのか?
私の場合は転職して新しいポジションに就いた時でした。
前回挙げた三つの条件が揃うのです。

●D型の行動パターン
まわりは知らない人ばかり。
相談できる相手もまだいない。
一人で結果を出さなくちゃいけない。
結果、成果、業績アップ・・・。
自然と結果重視・人間関係軽視のD型行動パターンに陥ります。

●駆け足で登るキャリア・パス。
採用した会社側では単なる欠員補充だったのですが、
採用された本人は大出世したつもり。
「失敗は許されない。早く業績を挙げなくちゃ」と、
力みかえります。

●マイクロ・マネジメント。
採用してくれた上司から「あなたを採用して良かった」と言われたい。
上司がマイクロ・マネジメントをしていなくても、
自分で自分をマイクロ・マネジメントしてしまう。

そういえば、新しい会社に入ってすぐは、
出張の度に分厚いレポートを書いていたものです。
1泊2日の出張で5ページぐらい。
読まされる側の都合など考えず、っていうより、
読まれてなかったですね。
「出張のレポートで報告しましたが、
小売店の品揃えの問題には、早急な解決策を提示しないとウンヌン」
なんて社長に話しても、
「そんなこと書いてあったっけ・・・?」みたいな顔してるときが多かったですから。

クイック・ウィンは外資の企業文化であると同時に、
転職で企業を移ることが多い
外資のマネージャーが感染しやすい「職業病」でもあるわけです。

この短気なマネジメント・スタイルに、
「計画組織力」を前面に押し出すセールス・スタイルが加わると、
現場の営業マン・営業ウーマンは、
顧客に冷淡でシラけたタイプに適応進化してしまいます。
ということを前回書きました。
「計画組織力」とは、話し合いで合意点を探るのではなく、
問題解決のためのアクション・プランを一気に作り上げ、
その実施を迫ることができる能力です。
(ビジネスに必要な能力であることは自明ですが、使い方が問題ですよね。
能力があることを認めてもらうのが目的ではなく、
納得ずくで顧客にアクションを取ってもらうのが目的なんですから。)

実はクイック・ウィンには顧客との関係を危うくするだけでなく、
働いている当の組織を、ひいては、自分自身を窮地に陥れる
墓穴が待っているのです。
私の場合もそうでした。

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 五つの誤り
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そのことを解き明かした論文が、
クイック・ウィン「本場」のアメリカの、
それもハーバード大学ビジネス・スクールから出ています。

『昇進者の心得』(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編・訳、
ダイヤモンド社 2009年)という本の第三章。
マークE.バン・ビューレンとトッド・サファーストーンという人の共著で、
タイトルは「功を急ぐと、なぜ失敗するのか」です。
抜擢マネージャーが犯すクイック・ウィンの誤りとして、
五つの点が指摘されています。

1. 成功体験をベースに、些細なことに全力を集中してしまう。
2. 自分は権限を持った司令官だと勘違いしてしまう。
3. 横柄な口調で指示を出すので、部下はソッポを向いてしまう。
4. 「新任マネージャーは予め決まった解決策を手にして乗り込んできた。
自分たちと一緒に考えるつもりなどない」と、部下に思わせてしまう。
5. 先回りをしたマイクロ・マネジメントをしてしまう。

読んだときに驚きました。
全部自分に当てはまっていたんだから。

一番目。
売上データのまとめ方や、分析の仕方が、
今までなじんだ方法と違うと、落ち着かない。
で、自分で変えちゃうし、命令を出して変えさせちゃう。
蓄積された過去データは、徹夜してでも自分で編集しなおしちゃう。

二番目。
例えば、着任の挨拶に行った取引先で、我が社の販売政策について苦情を言われる。
「そりゃ、もっともだ。すぐに直しましょ」と、自分の常識で判断し、
即断即決で変更を約束してきちゃう。
後でよく聞いたら、私が反故にしたのは、
かつて社長じきじきに作り上げたプランであった。

特に三番と四番は耳に痛い指摘です。
「横柄な口調」といっても、私だって「お前なぁ」なんて言いませんよ。
そうじゃなくて、励ましのつもりの言葉が非難と受け取られる。
アドバイスをするたびに距離が開いていく。
そういうことがあるのです。

そのころ私の口癖は「プロになろうぜ」
「プロの仕事をしようぜ」でした。

新しい会社に入って1ヶ月くらいすると、人事部に呼ばれます。
新任マネージャーに人事部からフィードバックが行われるのです。
業績のことより、社内の人間関係の問題などが伝えられます。
「関さん、テキパキ指示を出されていますが、怖がっている人もいるみたいですよ」と、
遠まわしに部下からの評価も伝えられます。
私はバカでしたから、
「そんなことないでしょ。丁寧な口調で話しかけているし、
プロになろうって、励ましているんですよ」と、返答しました。

「その『プロになる』っていうのが、問題のようですよ」と人事部長。
「『お前の仕事振りはまだアマチュアだ』という非難として受け取られてますよ」。

外からやって来たマネージャーは、ただでさえ恐れられているのです。
(私の場合は外見の問題もありますが)。
「根拠もなく既存スタッフを低く評価しているのではないか?」
「我々に知らせず、とんでもない新方針を打ち出すのではないか?」
「社内や業界の実情を無視した、独りよがりの改革を始めるのではないか?」
部下は不安なんです。
新任上司はそこに気を使わなくてはいけない。
私はホントにバカだったので、そこまで考えませんでした。

「まあ、結果を見ていてください。売上を確実に伸ばしますから。
まだまだ伸びシロはある、わはは」などと言ってました。
現状に不満を持っていた改革志向の部下には大歓迎されました。
が、「今のままでいいとは思わないけど、働き方が激変するのはイヤだ」という
大多数の部下からはソッポを向かれました。

こうなると、「部下は指示通りに仕事をやってるのか」と
こちらも疑心暗鬼になり、やたらと進行状況にチェックを入れるようになります。
そう、5番目の「先回りしたマイクロ・マネジメント」の始まりです。
組織はギクシャク、自分はカリカリ。
長く続きません。
そしてある日、始業前に社長室に呼ばれて、選手交代を告げられました。

自分で掘った墓穴でした。

恐ろしいのは、自分のバカさを反省せず、上手くいかなかったのを他人のせいにして、
墓穴から這い出してくるゾンビたちが大勢いることです。

次回は「懲りない」クイック・ウィン志向の上司と、うまく折り合いをつけて
楽しく働く方法を考えます。

今回もお読みいただき、ありがとうございます。
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