週刊外資系新聞

営業マネージャーのための予算必達術

メルマガ Vol. 4 2010年1月17日号

第1章 上司が欧米人

クイック・ウィンが突き当たる壁

欧米人・欧米型の上司の下では「ミスター・スピード」になることが求められます。

これまではその背景について考えました。

列挙すれば・・・、
目に見える成果だけにとらわれるD型(支配力重視型)上司の行動パターンと、
それを支える無意識のヒロイズム価値観。
手っ取り早く結果を出して、出世の階段を駆け上がろうとするキャリア意識。
上司とはいえ、またその上司から日常的に細部まで管理をされる
マイクロ・マネジメントの圧力。
どれも短い期間で成果を出そうと焦ること=
クイック・ウィン(Quick Win)志向に結び付きます。

では、営業の現場でミスター・スピードは期待された結果を出せるのでしょうか?

-------------------------------------
スピードは本当に勝利への鍵だろうか
-------------------------------------
スピーディであることはいいことです。
レスポンスが早い。
意思決定が早い。
行動が早い。

結果がすぐに出るし、ダメだったらやり直しができる。
そう「上手くいくまでやり直せばいい」のです。
お客が「ノー」と言ったら、それは「トライ・アゲイン」という意味だ、
というセリフに私も何度も勇気づけられたものです。

でも、このポジティブ・シンキングなセールス・スタイルにも弱点があります。

日本の商談は合意探索型です。
顧客のことを理解し、双方納得できるところを探して話し合いをします。
テーブルの上に積み上げていくのは札束ではなく、
お互いの信頼関係です。時間は掛かりますが、後味は悪くありません。

一方、欧米の商談はプレゼンテーション型です。
「問題はこれです。解決策はこれです。理由はこうです。だからこうします」という
説明とその反論への応酬が中心になります。
一気貫通したアクションの選択を迫る商談になりがちです。

人材コンサルタントの梅島みよ氏が書いた『日本の課長の能力』
(日本経済新聞出版社・2008年)では、
日本の課長の強みは要点把握力、責任感、バイタリティ、判断力であるとし、
弱みはリーダーシップ、計画組織力、創造力、説得力、分析力だとしています。
なかでも、計画組織力の差には、相談しながら仕事を進める日本型と、
一気呵成に実行プランまで作ってしまうアメリカ流の違いが反映されていると
分析されていました。

ビジネス・スクールの授業で発表するならまだしも、
実際の商談でこの計画組織力を前面に押し出すと、
「一方的」
「独善的」
「強圧的」と受け取られることになります。

「どうしましょう? お知恵を貸してください」という相談でなく、
「解決策はこれです。ノリますか? 降りますか?」という
力くらべです。
知恵を出し合う、なんてことにはなりません。

このスピード営業、こちらの力が勝っているうちは必勝パターンです。
なんと言っても、結果がすぐに出る。
ダメならやり直せばいい。それでもダメなら他に行けばいい。
これで、ぐーっと押していけます。
ある壁に達するまでは・・・。
そして、その壁は案外近くに立っているのです。

一つは顧客。
一方的なスピード営業は、決して顧客からは好かれません。
「今はガマン。でも、そのうち見てろよ・・・」と、
顧客はシブシブ合意してるだけなんですから。

もう一つは、こうしたパワー・ゲームを実際に戦う
営業マン・営業ウーマン自身のモチベーション。
自分のことを嫌っている相手に営業活動をする。
感受性が少しでもある人間に、これは辛い。
そこで、好ましくない適応進化が営業マン・営業ウーマンの中で始まります。

-----------------------------
顧客と友達になってはいけない
-----------------------------
私が勤めていた会社で、流行のCRM(顧客関係管理システム)を
導入することになりました。
CRM(Customer Relation Management)というのは、
属人的な要素が多く、ブラックボックスになりがちな
営業のプロセスを「見える化」する目的で、
商談の進捗状況をコンピュータで管理する経営手法です。

同じ親会社が経営しているヨーロッパの兄弟会社では、
すでにCRMを導入をしていて、上手く回っているらしい。
ヨーロッパへの出張のついでに足を伸ばし、
訪問して研修を受けるべし、ということになりました。

ヨーロッパのとある大都市の兄弟会社を訪ねました。
現れた営業マネージャーは長身の二枚目。貴公子然としたルックスに
「やっぱり、こういう人が高級品を扱わないとね」などと思いながら
彼のオフィスに通されます。

「というわけで、日本から来ました。
ちかじか日本にもCRMを導入するので、色々教えてください。
あなたの会社が最先端をいっていると聞いてます」と持ち上げたのだけど、
当のマネージャー氏はCRMのソフトを起動するどころか、パソコンの方すら向きません。

一時間くらい、業界の噂話や社内の人物評定を聞かされたあと、
「そう、CRMだったよね。アドバイスは一つだけ。
導入しないほうがいい。」
「へっ・・・」
「導入するにしても、なんのかんの言って、なるべく先延ばしにした方がいい。」
「・・・」

その時は「こりゃ、ダメだ。無駄足だった。日本に帰って何と説明しよう」と
思ったのですが、
別れ際に彼が言った
「この会社ではね、顧客と友達になっちゃいけないんだ」という言葉が、
東京に戻ってからも頭から離れませんでした。

人間関係まで計数化して管理しようとするCRMは、
顧客と距離を取るよう指示を受けている彼にとって、
営業活動を一層やりにくくするものだったのでしょう。

彼は辛かったんでしょうね。
仕事と私生活をキッパリ分けるヨーロッパ人にとっても、
顧客と親しくしたいでしょう、
ちょっとは信頼してもらいたいでしょう。

でも、それができないとなると・・・。
「冷めた人間」に自ら適応進化してしまうのです。

ソフィスティケイトされていて、エレガントで、クール。
言い換えれば、巧言令色でシラけている。

処世術と言えばそれまでですが、こんなタイプに適応進化してしまっては
人間もビジネスも成長しません。

そう、手っ取り早く手にした成功の期間は短く、
クイック・ウィン志向の営業スタイルは必ず停滞期を迎えるのです。

次回はもう一度、別の観点からクイック・ウィンの弊害を分析します。
営業として外資で楽しく働くためのヒントは、その次の回で。

今回もお読みいただき、ありがとうございます。

>>>メルマガ目次に戻る
>>>ホームに戻る